2/28 「オオムラサキ保全ワークショップ Vol.3」を開催

オオムラサキ

2月28日(日)、10:00~簾舞地区会館にて、簾舞地区まちづくり連合会「歴史・文化部会」と「国蝶オオムラサキ保存会」による「オオムラサキ保全ワークショップ Vol.3」を開催しました。
八剣山麓のオオムラサキの自生地では一部の採集者による乱獲が伝えられており、地域個体群毎に特色ある遺伝型を有するオオムラサキの持続性を担保する上で、豊滝等での保護活動が重要なものになっています。令和2年度「南区未来へつなぐ笑顔のまちづくり活動推進事業」としての「国蝶オオムラサキ保護育成等に係る育成環境再構築整備事業」としての取組みで、1回目のワークショップ(フィールドワーク)は7月26日(日)にオオムラサキ観察会を行い、11月8日(日)の「オオムラサキ保全ワークショップ Vol.2」では、簾舞における中・長期に渡る国蝶オオムラサキの保護育成のあり方について意見交換を行いました。
今回、3回目となるワークショップは、地域やオオムラサキ保全に関心を持つ方々に参加いただき、オオムラサキ保全に係る解消すべき課題の抽出を通じて、専門家の知見やアドバイスをもとに今後10年間にわたる保全のロードマップを作成しようというものでした。
成田まち連会長の挨拶後、この事業のコーディネーターである、北海道新聞生き物フォトエッセイ「いのちのケシキ」でもお馴染みの環境コンサルタント長谷川雅広氏(オフィスマルマ代表)の進行で進められました。
長谷川氏からこれまでのワークショップの経緯とともに、北海道では石狩(厚田~浜益)、栗山町、そして札幌西部の八剣山地区を含む豊平川河岸段丘域という限られた地域に生息しているオオムラサキの生態等について改めて説明、解説がありました。そして、オオムラサキの発生地として有名な八剣山地区では採集バイアスが大きいために地域個体群の持続性が危ういこと、北海道に生息するオオムラサキは保全上の法的位置づけにないことや八剣山が国有林地であるために、採集禁止などを求めるにはかなり難しい調整が必要なことも合わせて紹介されました。
また、こうした中で、保護活動の拠点となっていた旧豊滝小隣接地の施設撤去が始まり、保全活動でのマンパワー不足等の中、保全活動の組み立て直しが求められる転換期であること、についての話しがありました。
そのうえで、本来、その場所にあるものから何も足さない、引かないという環境保全の大原則「No Net Loss」に基づいての保全活動を進めていくには、どんなことが考えられ、できるであろうかという問いかけが参加者へなされました。
それに対して、出席大学生から「自分はオオムラサキの採集者ではないが、採集者側の意識としては管理人が居なくても「保全地」という看板があるだけで入れない」との発言があり、ロープ囲いのみならず早急な注意喚起の看板設置が提案されました。また、オオムラサキ生息地としての情報を出す、出さないについても、地域の宝としてオープンにするほうが効果的であり「衆人環視」体制に繋がるとの意見も出されました。衆人環視を効果的なものにする秘訣はできるだけ早期に実施することだと、参加した学識者や長谷川氏からも裏付けされました。
その後、市内周縁のオオムラサキ生息地における、新しい土地を求めて放散するパイオニア個体の飛来範囲記録を論拠とした、簾舞地域におけるオオムラサキの拡散可能性予測が長谷川氏から示され、採集禁止を前提とした重点保護地域(サンクチュアリ化)を目指す範囲として旧豊滝小学校周辺の保全活動地を定めるなど、近傍のオオムラサキ潜在生息可能域(エゾヒノキ生息地)をゾーニングしました。また、ゾーン毎に保全の方針を共有しました。
そして、今後10年間を見据えたうえでの、ゾーニング毎の保全方針を実践するために必要な課題について、自然科学面と社会学面の双方から意見抽出を行いました。自然科学面ではエゾエノキの育成の進め方や成虫の拡散把握はどうするといった意見、社会学面では立ち入り制限をどう具体化させるかや衆人環視体制をどう作る、拠点施設の必要性というような課題について、様々な提案や意見がありました。これらのうち主要なものを列記します。
・簾舞を知らない人が多い。ポスターやネット等、地域の魅力の発進力を充実、強化する。地域への関心を深めることで人が集まる。
・対採集者の対策が必要であるが、ユーチューブ他、Webサイトやネットによる地域外の、特に若い人への情報発信や周知活動を対価を支払って推進する(サンクチュアリ化後?)。
・情報発信にはマンパワーが必要である。そのためには、将来の保全活動の担い手となりうる地域の子どもたちへのアプローチを多くする。オオムラサキに関わるイベントや活動現況等の情報発信を多くする。情報発信の媒体として小学校をもっと活用し、学校を通じて保護者へアプローチすることも有効。保全活動を通じて地域のつながりもできる。
・採集禁止地、保全地であることを周知する(サンクチュアリ化後?)。
・将来的な保全拠点施設の設置が必要。
・保全ゾーン周辺地の土地所有者や農家さんとのコミュニケーション構築による保全への協力関係構築が必要。
・使用されていない公有地へのエゾエノキの植樹、ビオトープを導入した公園つくり。・蝶の採集者に対してなんら規制できない現行法体系ゆえに活動地を保全するという方法しかなく、なおさらに行政機関との早急な連携、調整が必要、等々。
これらの他にも様々な意見や提案があり、また場面場面で、長谷川氏から他地域における実際の事例の提示を受けながらワークショップが進められました。
そして最後に、これらの意見をもとに今後10年間の活動のロードマップと報告書を作成する旨が伝えられて終了しました。
今回のワークショップには、簾舞や豊滝地区の方々の他に、将来の活動に繋がる若い人材としての高校生や大学生、専門学校、大学院生の5名の学生さんの参加や他地区からの方々、北海道新聞社の記者さん、併せて17名の参加者があり、大変有意義な時間を共有できたと思いました。

 当日配布されたパンフ
 オンライン参加に向けての Skype
当日の発言記録 ↓
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