8月24日(土)、簾舞地区会館にて簾舞地区町内会連合会文化事業部の主催による文化講演会を行いました。
環境コンサルタントでオフィスマルマ代表の長谷川雅広さんを講師にお迎えして「生物多様性は地域力で~オオムラサキと簾舞のイイ関係」というタイトルで、簾舞で保護活動を行っている国蝶のオオムラサキについて、その生態や保全のあり方、そして、自然環境の地域性を尊重することの意義についてお話しをしていただきました。
オオムラサキは、日本のタテハチョウのうちで最も大きなチョウであり、夏になって樹冠を高速で滑空する様子は鳥にも見間違われるそうです。また、台風や洪水等で自然環境がリセットされる状態に依存している、過度に安定した環境を嫌う攪乱依存種という生物だそうで、本州では下草刈りや間伐等の軽度の攪乱を受ける雑木林や河畔林に生息する、ヒトの生活圏に寄り添う、いわば豊かな里山のシンボルだそうです。北海道が生息の北限ですが、北海道では石狩平野周縁部のごく一部の、幼虫時の食草と成虫後に採食できる自然環境でしか生息できないそうです。そうした生息地のうち、昆虫マニアにも最も有名な八剣山地区では、売買を目的に一人で50頭も捕獲する採取者がいるそうで、これでは絶滅の危惧も考えられます。
そうした中、オオムラサキが八剣山地区と生態学的に交流可能範囲にある豊滝での保全活動は意義のあるものだそうです。豊滝をオオムラサキの自然発生個体のサンクチュアリとしていくためには、人の手による管理が必要とされるのですが、その保全活動のキーワードは、簾舞の土地の個性ともいえる生態系を守るための「持ち込まない・持ち出さない」の基本原則であり、他の生物との相互作用も補完する視野が必要ということのようです。
オオムラサキに象徴される地域自然は、所有者が不明瞭である一方で、地域住民の共有財産といえます。こうした自然資源が持続的に未来へと残されるためには、適正な管理が必要です。そうした管理には地域力、地域の意志力が必要になるとのお話しでした。
地域の皆さん方の他、、児童館に遊びに来ていた小学生、併せて40名余の出席者がいましたが、初めて聞く話やオオムラサキの映像、ガラス標本にも興味深く見入っていました。