最近、北海道のみならず本州でもクマ出没被害に係る報道が非常に多くなっています。
9月13日のお知らせでもお伝えしましたが、10月15日(日)の午後、環境省の「令和5年度クマ類の出没に対応する体制構築等業務」事業による、環境省、北海道、札幌市の共催による「地域のヒグマ対策を考える」というヒグマに係るセミナーを行いました。
当日は上砥山で敬老会があり、また、まち連からの広報、周知活動が不充分であったためか、参加者は簾舞一区、二区、三区、四区、団地及び豊滝中央からの12名ほどでしたが、熱心に説明を聞き、多くの質問等もありました。
北海道環境生活部自然環境局野生動物対策課ヒグマ対策室の武田主幹から開催の趣旨説明があり、その後、参加者の自己紹介がなされ、NPO法人エンビジョン環境保全事務所早稲田研究員からヒグマの生態やヒグマが街に出てくる理由等、ヒグマに係る講習が行われました。
ヒグマは、日本の陸上では最も大きな動物で、オスは体長2m、体重150~400㎏、メスで体長1.5m、体重60~150㎏。1~2月に約400gで生まれた子グマは1~2歳までは母親と一緒に行動し、その後独立すること。なお子連れのメスは危険性が高い。
植物質を主とした雑食性だが、肉や魚も簡単に手に入れば積極的に食べる。
春はフキなどの草本類や前年秋のドングリ等の堅果類。夏は草本類の他、アリなどの昆虫類。農作物は一ヶ所で大量に食べることが出来る栄養価の高い最高の食べ物。山の食べ物よりも魅力が高いので、畑に出てくる。秋はヤマブドウ、コクワ、オニグルミ、ドングリ等の木の実。ヒグマは消化能力が低いので、大きな身体を維持するのには大量に食べ物を食さなければならず、最も入手しやすく、効率よいものを餌にする。そして覚えた食べ物に執着する。
行動範囲が広く、1日に10㎞以上移動することもあり、年間での行動範囲はオスで数百㎢、メスで数十㎢でナワバリはない、ということ等々を実物標本等も使って説明されました。
さらに、ヒグマが街に出てくる理由とそれに関連して2018~2022年の過去5年間のヒグマ目撃情報のデータ化とDNA検査結果によっての、特に当簾舞、豊滝、砥山地区でのヒグマ出没状況、そしていわゆる問題ヒグマ等についての話しがありました。
1966~1989年の春グマ駆除により日本海側の積雪の多い地域を中心にヒグマ生息数が減少、1990年には5,800頭となった。しかし、春グマ駆除中止後は増加し、2014年で1万頭を超えた。かつては駆除に対して報奨金が出たときもあったが、現在の札幌では出動費が出るだけで、処分クマは検体の採取後、焼却処分され肉としての利用はないとのこと。もっとハンターの駆除活動への費用支援があっても良いと思える。今はないに等しいのではないか。
増加傾向にあるヒグマは、街の周辺にメスが定着している。簾舞・豊滝・砥山地区では2018~2022年で20頭のヒグマが確認されている(オス10・メス10)。そのうち6頭がヒトに慣れた個体なのか、地域に出没を繰り返している問題ヒグマ。中でも特に2頭のメスが要注意のヒグマとして警戒している。
当面はヒグマを引き寄せる農作物、放棄果樹、クルミ等の防除や撤去とともに、問題ヒグマの捕獲が必要であり、その後の防除も重要とのことでした。
講習後、休憩を挟んで地域住民が2グループに分かれて、これまでに自分たちが得てきた情報等を交換しながら、地域内でヒグマがよく出没する場所、出没しそうな場所、その理由、見通しの悪い場所等を簾舞・豊滝・砥山地区の地図にシールを貼って、いわゆるハザードマップの作成を行いました。そして各グループから作成した地図についての説明を行って全体で情報を共有しました。
ワークショップ後、札幌市の環境共生担当課の清尾係長から、市域をいくつかの地域(ゾーン)に分けて各ゾーンに適したヒグマ対策を進める「さっぽろヒグマ基本計画」についての説明がありました。こうしたすみ分けによる安全、安心な暮らしを目指すためにも、ヒグマについて改めて正しく理解し、その生態を把握することが重要だと思われます。
最後に参加者から多くの質問や意見が出されました。
その中で、これだけ毎年のように問題ヒグマが出てきている状況からしても、北海道ではヒグマの生態調査のための予算付けを行ってその調査を実現してほしいとの要望が出されました。
私もその通りだなと思いました。
当地域ではヒグマ以上にエゾシカ、アライグマ等による食害が年々酷くなってきています。国、道、市は是非ともその対策に向けてしっかり予算付けをしてほしいものです。